今日は短距離走における正しい腕ふりについて解説します。
少年
程度によりますが基本的には矯正を目指すべきだ。というのが私の考え。
短距離走における腕ふりの役割
走る上で腕ふりの役割は大きく3つあります。
- 地面へのキック力を高めること
- リズムをとりやすくすること
- 全身のバランスをとること
地面へのキック力を高めること
腕ふりをすると地面を押す力が増します。一説には、腕ふりは走りの際に生み出すエネルギーの20%を担っているともいわれているほど。
本当か気になる人は以下を試してみましょう。
その場で両腕を後ろから前に勢いよく振ってみる
腕が脚の横を通過する際に地面に力が加わっているのが感じられるはずです。
体重計に乗って腕ふりをしてみる
少年
目に見えて地面に力が加わっているのを確認したければ、体重計に乗って腕ふりをしてみよう。腕が脚の横を通過する際に体重計がより大きな値を指すことが確認できるはず!
走っているときも同じ原理で腕振りによって地面に力が伝わるのです。
全身のバランスをとること
試しに腕をまったく振らずに走ってみよう。バランスをとりづらく感じるはずです。これは腕で重心のバランスをとれないから。
もう少し具体的に考えてみましょう。
例えば、右足で接地しているとき。左足が浮いているので左半身の重心は少し高くなります。このとき腕をふらないと身体が左に回転してしまいます。
対して腕をふっているとどうなるか?右足で接地しているときには右腕が上がっていますよね?
つまり、右半身の重心が上に持ち上がり、左右の重心の高さがそろうのです。
リズムをとりやすくすること
手足のタイミングがあった腕ふりをすると、走りにリズムが生まれます。反対に、腕ふりのタイミングがずれると上半身と下半身の動きがバラバラになります。走りによいリズムが生まれず、当然走るスピードも上がってきません。
よい腕ふりとは?
良い腕ふりとは、役割をふまえて①地面へのキック力を最大限に高め②走りのリズムを生み出し③体のバランスをとれる、加えて④ムダな動きや力みを生み出さないもの ということになります。
具体的には次のような腕ふりを目指しましょう。
- 脇を閉めてまっすぐ振ることを意識する
- スタート時は大きく、徐々にコンパクトに振る
- 腕の角度は90度に固定することを意識する
- 手首はあまり動かさない
- 手はつぶさないように生卵を持っているイメージで軽くにぎる
「脇を閉めてまっすぐ振ることを意識する」
脇が開いた腕ふりがまずいポイントは大きく2つあります。
脇が開いていると「十分に地面へのキック力を高められない」
脇を開いてた腕ふりによって腕の重心が上下にあまり動かず、キック力アップにつながりません。
脇が開いていると「上半身が大きくねじれる」
脇を開いて走ると上半身が大きくねじれます。これは短距離走においてはムダな動きです。
脇を閉じてまっすぐ振る方が効率がよい
上記の理由から、脇は閉じてまっすぐ振る方が効率がよいのです。
ただ、一点ポイントがあります。人体の構造上、完全に脇を閉じたまっすぐな腕ふりは窮屈で不自然な動きになるのです。そこで、意識の上ではまっすぐ振るようにするべきですが、多少腕が開いていたとしてもそこまで神経質になる必要はありません。
どの程度なら問題ないと判断できるかは難しいですが、ひとつの目安としてトップ選手を参考にするといいでしょう。
「スタート時は大きく、徐々にコンパクトに振る」
スタート時からピッチが上がっていきます。腕は足にあわせて振りますよね?なので、腕をふるスピードはスタート直後より加速してきたときの方が速くなります。そして、すばやく振るためには、腕をコンパクトにふる必要があるのです。このようにスタート時は大きく、徐々にコンパクトに振っていくことで、リズムをとりやすくすることができます。
「腕の角度は90度に固定することを意識する」
コンパクトにふる際の目安として、90度に肘を固定するよう意識してみましょう。すると、腕が前に来たときに60度くらい、後ろに来たときに120度くらいになってバランスのよい腕ふりになります。
また、前に振るときには視界の端に手先が入るくらいまでを意識するとふり幅がちょうどよい腕ふりになります。
このように振ることで腕のふり遅れで走りのリズムが狂うのを防ぐことができます。
腕が伸びるクセがついてしまった…という人はこのようなNISHIスポーツから出ている腕振りマスター(T7714)矯正という道具を使ってみるのも手です。
出展:楽天
と思いましたが、すでに販売されていないので自作してみましょう。
ちょうどいい長さに結束ベルトを切り、後はバックルに通して輪っかをつくるだけでできます。
「手首はあまり動かさない」
手首をいくら振ったところで走るスピードは増しません。つまり、手首を動かすことは走る上ではムダな動きといえます。極力おさえるよう注意しましょう。
「手はつぶさないように生卵を持っているイメージで軽くにぎる」
手をギュッとにぎって腕ふりをすると、肩に力が入って力みにつながります。また、身体のコントロールがうまく出来なくなるためリズムも悪くなりがち。
かといって手をだらっとしていると手首より先がムダに動いてしまうため程よく力を入れるのがよいのです。そのため、「手はつぶさないように生卵を持っているイメージで軽くにぎる」よう意識するのが良いということ。
さらに一歩上の腕ふりを目指すためには
腕ふりの基本的な役割については一通り解説しました。ただ、実は腕ふりにはもう一点重要な役割があります。
それは腕ふりによって骨盤の動きを引き出すということ。
骨盤の動きを引き出すとスピードが高まる
骨盤の動きが引き出されて力強くなると、スピードが高まります。
桐生選手を見てみましょう。他の選手より骨盤がよく動いているのが分かるはずです。
腕ふりで骨盤の動きが引き出される!
肩甲骨と骨盤は対になる関係になっていて、片方が動くともう片方も連動して動きます。
四足歩行の動物が歩くのを見ていると良く分かるはずです。人間ももともとは四足歩行。そこから進化して二足歩行になったわけです。そう考えると人でも肩甲骨と骨盤が連動するのは当たり前かもしれません。
骨盤の動きを引き出す腕ふりとは?
ここまでの話を聞いた方はもうお分かりでしょう。骨盤を動かすための腕ふりとは、「肩からではなく、肩甲骨から動かす」腕ふりです。
前に振るor後ろに振る?
これはどちらが正しいということはなく、宗教のようなものだと考えています。
なので、試してみて自分になじむ方を取り入れればいいでしょう。それぞれの宗派の意見を書いておきます。
前から後ろに振るメリット
後ろに振ったときの反動で前に戻ってくるのでリズムを取りやすい!
後ろから前に振るメリット
ダブルアームで踏み切るのに慣れているとなじみやすい。跳躍選手は試してみましょう。
まとめ
速く走る上で腕ふりはとっても大切。
より速く走るためには、次のような腕ふりを目指すのがよい。
- 脇を閉めてまっすぐ振ることを意識する
- スタート時は大きく、徐々にコンパクトに振る
- 腕の角度は90度に固定することを意識する
- 手首はあまり動かさない
- 手はつぶさないように生卵を持っているイメージで軽くにぎる
- 肩からではなく、肩甲骨から振る